DH国際シンポジウム
DH国際シンポジウム
生成AIの発展により、人文学研究においても、多様な問いに対して即座に回答が得られる環境が整いつつある。しかしその回答は、学習・参照されたデータに基づいて生成されるものに他ならず、信頼性を欠くデータからは適切な回答は導かれず、デジタルデータとして整備されていない事象については、そもそも回答の生成自体が成り立たない。生成AIが普及する時代だからこそ、信頼に足るテキスト、画像、メタデータ、注釈、校訂情報といった基礎データを構築し、共有し、次世代へと継承していく営みの重要性は、むしろ高まっている。
他方で、生成AIが多くの問いに即座に応答を返すようになった現在、時間と労力を要する基礎データの構築・共有・継承という地道な営みに、研究者・研究機関、そしてそれを支える社会が継続的に関与し、そのコストを担い続けるためには、こうした営みを支える明確なインセンティブの設計が不可欠となる。そこには、生成AIを活用した効率化という視点も含まれうるだろう。
本シンポジウムでは、各地でデジタル・ヒューマニティーズ(DH)に取り組む教育・研究機関の関係者が集い、生成AI時代の人文学研究基盤をめぐり、基礎データの構築を持続可能な営みとしていくための学術的・制度的・社会的インセンティブのあり方を探る。
Christof Schöch氏は、ドイツのトリーア大学におけるデジタル・ヒューマニティーズ講座の教授であり、トリーア・デジタル・ヒューマニティーズ・センター(TCDH)の学術共同ディレクター、Journal of Computational Literary Studies(JCLS)の共同エディタを務めている。専門は、計算文学研究とフランス文学史の交差領域である。現在は、アイルランドのゴールウェイで開催される国際デジタル・ヒューマニティーズ会議2027(DH2027)のプログラム委員会の共同委員長を務めている。過去には、ドイツ語圏デジタル・ヒューマニティーズ協会(DHd, 2018–2022)の会長、および国際デジタル・ヒューマニティーズ学会連合(ADHO, 2023–2024)の会長を務めた。
9:45 開場
10:15 オープニング・基調報告
下田正弘(武蔵野大学教授/東京大学名誉教授/一般財団法人人文情報学研究所代表理事)
永崎研宣(一般財団法人人文情報学研究所主席研究員/慶應義塾大学教授)
10:55 日本のDHの現在:DH関連教育・研究機関によるポスター/デモンストレーション
1. 九州大学大学院 人文情報連係学府の取り組み
中川奈津子(九州大学大学院 人文科学研究院)
2. 岡山大学の大学院教育におけるDH:2つのプログラムと新規履修コース
石田友梨(岡山大学学術研究院社会文化科学学域)
3. 大阪大学大学院 高度副プログラム「デジタルヒューマニティーズ」:「読む」を超えて、「解析する」人文学へ。
田畑智司、吉賀夏子、三宅真紀、ボル・ホドシチェク(大阪大学大学院人文学研究科)
4. 同志社大学文化情報学部におけるデジタルヒューマニティーズ研究・教育の取り組み
RAPPO Gaetan、冨田皆仁、三輪玲以佳(同志社大学文化情報学部)
5. デジタル・パブリックヒューマニテーズを促進するための立命館大学ARCの取り組み
山内啓之、堀池理生、美龍硬幸、鎌田遼、矢野桂司、赤間亮(立命館大学)
6. ゲームアーカイブの構築とコーパス化によるAI 活用型DHリサーチの推進
福田一史(立命館大学ゲーム研究センター)
7. 京都大学人文科学研究所共同研究班と附属人文情報学創新センタープロジェクトにおける研究データマネジメント
安岡孝一(京都大学人文科学研究所附属人文情報学創新センター)
8. 京都大学大学院文学研究科附属 文化遺産学・人文知連携センター 人文知連携拠点
天野恭子(京都大学文学部/文学研究科)
9. 名古屋大学DHSSの研究・教育活動について
須田永遠、生駒流季(名古屋大学デジタル人文社会科学研究推進センター)
10. 開かれた共同構築環境による通時コーパスの拡張
髙橋雄太、小木曽智信(国立国語研究所)
11. 古典籍TEIにおける教育編集版(Educational Edition)の試み
菊池信彦(国文学研究資料館 古典籍データ駆動研究センター)
12. 国書データベース One Million Bibliographic Records Achieved: Making the Database More Usable
嶋村裕子(国文学研究資料館 基盤データセンター)
13. アジア・アフリカの研究資源の集積と構築
山越康裕、児倉徳和、小倉智史、植田尚樹(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
14. 立教大学文学部・大学院文学研究科・大学院キリスト教学研究科《デュアル・プログラム》における人文情報学教育の取り組み
大沼太兵衛、小澤実(立教大学)
15. 早稲田大学におけるデジタル人文学の取り組みと今後の展開
師茂樹、岡室美奈子、加藤大鶴、山本聡美(早稲田大学)
16. 史料画像から研究データへ:生成AI時代の日本史史料基盤構築
山田太造(東京大学史料編纂所)
17. 東京大学大学院人文社会系研究科におけるデジタル人文学の研究教育
大向一輝、塚越柚季、小川潤(東京大学大学院人文社会系研究科)
18. 東京大学における人文学研究基盤構築に向けた取組:デジタルアーカイブズ構築事業とUTokyo Repositoryから
田口忠祐、立原ゆり(東京大学附属図書館)
19. 国立国会図書館におけるOCRの研究開発
青池 亨、鵜飼麻弘(国立国会図書館)
20. 人文学研究ファーストのデータ共有と継承
亀田尭宙(人間文化研究機構)
21. 慶應義塾大学文学部/大学院文学研究科におけるDH研究・教育の展開と人文学領域のデータ管理
安形麻理(慶應義塾大学文学部)
22. 慶應義塾ミュージアム・コモンズにおける DH 実践 デジタル文化資源を〈つくる・構造化する・共有する〉
篠田和宏、持田玲、高須賀萌、大島志拓、本間友(慶應義塾ミュージアム・コモンズ)
23. 筑波大学におけるDHの取り組み2026 〜資源・研究・教育〜
和氣愛仁,堤智昭,三原鉄也,宇陀則彦,永井正勝(筑波大学)
24. ToUDA史料館コレクションリニューアル:成果と課題
片倉峻平、加藤諭(東北大学)
25. SAT大藏経テキストデータベース研究会
下田正弘、永崎研宣、村瀬友洋、朴賢珍、王一凡、YI Yeong-il
26. 文部科学省委託事業「人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業(JPMXP1624)」(再委託先:慶應義塾/実施機関:慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo))による東アジアテキスト構造化のガイドライン及びチュートリアル
永崎研宣、高須賀萌、持田玲(慶應義塾大学)
13:30 基調講演
Christof Schöch (Trier Center for Digital Humanities, University of Trier)
14:50 パネルセッション「人文学データの構築・共有・継承をめぐるインセンティブの再設計」
再利用可能な人文学データをつくるにはーくずし字認識のための行画像データセット構築の経験からー
橋本雄太(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館)
プロセスの成果を共有する:ミュージアムのデジタル・コレクションのコモンズ化
本間友(慶應義塾ミュージアム・コモンズ)
多様な担い手と創る方言資料: 異分野専門家と地域コミュニティとの協働的資料構築
中川奈津子(九州大学大学院 人文科学研究院)
文学研究の大学院生と作るTEIテキストデータ──Word、漱石、人文知
日比嘉高(名古屋大学大学院人文学研究科)
TEI知識ゼロでも研究データを組み立てる: 江戸期版権史料「株帳」符号化における参加インセンティブの設計と実践
吉賀夏子(大阪大学大学院人文学研究科)
16:50 コメント(予定)
17:10 総合討論
17:50 終了挨拶
下田正弘(武蔵野大学教授/東京大学名誉教授/一般財団法人人文情報学研究所代表理事)
一般財団法人人文情報学研究所/科研費特別推進研究「デジタル研究基盤としての令和大蔵経の編纂―次世代人文学の研究基盤構築モデルの提示(JP25H00001)」/文部科学省委託事業「人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業(JPMXP1624)」(再委託先:慶應義塾/実施機関:慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo))